「かくれんぼ」


「かくれんぼしようよ」「さんせーい!」
元気な声が響いた。毎日この公園に来る子供達だ。
「じゃんけんで鬼決めるぞー」
「じゃーんけーん……」
「わー、メグミちゃんが鬼だー」

時は25世紀。この時代には、かくれんぼがブームとなっていた。
ただのかくれんぼではない。
身体縮小技術が普及し、誰でも扱えるようになった今、
流行の最先端は何と、人間の体である。
鬼になった子の口から体内に入り、消化器の様々な所で10分間隠れる。
鬼は遠隔操作型内視鏡も飲み、「侵入者」達を探し出すのだ。

「メグミちゃんの体に入るの、初めてだね」
「どんなだろう、ドキドキするな」
鬼を免れた子らが緊張気味に喋っていると、メグミは
「た、多分エッちゃんやユウくんとかと同じだよー」
と、もじもじ赤面しながら答える。
そのうち、メグミを除く4人全員が縮小を完了、
メグミの掌に載せられた。

「よーし、じゃあメグミちゃん、食べて食べて」
手を口に近づけ、少しずつ口を開けるメグミ。
4人は、初めて目にした彼女の口内に、しばらく見入る。
「じゃあ、入れるよ……」
「うわわっ!」
やや無造作に4人を口に放り込み、口を閉じた。

メグミの口の中。
エツコとスズリは無事舌の上に着陸したが、
ユウジは前歯に引っかかってしまい、
シュンは舌と歯茎の間に湛える唾溜まりにはまった。
「ひいやれやれ……ちゃんと入れてほしいなあ」
「仕方ないよ、メグミちゃん、初めてだし」
灯りを照らし、口の中をぐるり見回す。
「口の中、きれいだね」
「歯もつるつるだし、舌もほっぺたの裏もすべすべだね。いいなあ」

2人が舌の上に這い上がっていると、メグミが数を読み出した。
「あ、もう始まってる。早くのどへ行かなきゃ」
ユウジを先頭に、次々と細い口蓋垂の横をくぐって行く。
そして、みんな思い思いの場所に隠れた。

「みんな、あたしの中のどこに隠れたんだろう……」
数え終えたメグミは、人数分の内視鏡をゆっくりと口に入れる。
滑りを良くするために中で少し揉んで唾を付けると、
残らずごっくんと飲み込んだ。

胃の中。
つるつるした粘膜が、しわしわにうねり返る空間。
うねの隙間に、ユウジが隠れていた。
「10分なんて軽い軽い」
にわかに、辺りが明るくなった。内視鏡のサーチライトだ。
焦らず、隙間を縫って遠ざかっていれば見つからないだろう。
そう思っていた瞬間、突然胃が活発に動き出した。
「うわ!うわわっ!」
内視鏡が胃壁に張り付いている。何かしたらしい。
蠕動のため周りの壁は伸びきり、敵のカメラが振り向く。
逃げようとした途端、上から粘度の高い胃液がボタッと落下。
絡みついて動けなくなったユウジは、あっさり捕まった。

十二指腸。
側面には、胆汁と膵液が分泌される穴がすぼまっている。
その口の中に人影。エツコだ。
「あまりいい隠れ場所がないなあ……小腸まで行きゃよかった」
液に触れて着色してしまった手足を見つつ、呟く。
少し穴が開く。既に追っ手が来ているのか、微妙に明るい。
エツコは内視鏡の位置を認めるために少し身を乗り出す。
幽門を越えて入ってきたところらしい。近くはないが、どんどん接近している。
「ちゃんと隠れないと」と再び穴の中に潜るが、
ここで予期せぬことが起こった。
穴が大きく口を開けだした。
「え?え?何でこんな時に開くのよ!」
ちょうど悪いときに、内視鏡は外の頭上を泳いでいた。
ライトが前後左右を隈無く照らし回す。ふと光が穴の中にも届いた。
内視鏡は見逃さなかった。
「うわ、来たよ!こらっ閉じなさいっ早くっ」
エツコが穴の口をげしげしと叩いたり蹴ったりすると、穴はきゅっと閉じた。
「やった!」

と思ったのも束の間だった。後ろからモゴモゴ音がしたかと思うと
物凄い衝撃がエツコの体に浴びせかかり、穴の外へ追い出された。
液が分泌されたのだ。
視界が利かない中、内視鏡のライトに捉えられ、エツコも捕まってしまった。

「ゲホッゴホッ」
メグミは大きく咳き、口から痰に包まれたカプセル2つを取り出す。
中には捕まった2人。
「メグミちゃん、鬼初めてなのに早いなあ……ちえっ」
「もうちょっと体の中見てたかったね」
メグミはもう、と耳を赤くさせながら2人の体を元の大きさにした。
「よし、あと2人!」

小腸。
無数のブツブツが波を打つ、幻想的なピンク色の世界。
この長大な管の中で、1人の女の子と1つの機械が闘いを繰り広げていた。
内視鏡がクグリを最初に見つけて6分。
普通なら見つかった時点で勝負が決するものだが、
クグリはうねの間を駆けめぐって敵の視界から巧みに逃げ回る。
「時間内を逃げ切りさえすれば勝てる……」
内視鏡は一定の距離をとり続け、
常にクグリが移動可能な範囲を監視しながら移動する。
同じようなやりとりがこうして続いてきた。

「はぁはぁ、まだ終わらないな……逃げてる時は長いなあ」
すでにかなりの距離を逃げてきた。しかし、終了の合図は鳴らない。
敵の場所を見定めながら、後半は大分速めに動いた。今の所追っ手の影はない。
柔毛のひだひだに寝転がり、小休止するクグリ。
「気持ちいいな……おとなしいメグミちゃんの腸にぴったりの感触」
寝そうになったところでにわかに光を浴びた。

飛び起きて敵の視界から逃げようとするクグリ。
しかし、続きはなかった。
目の前には巨大な出口、回盲弁。この向こうは大腸だ。
しかし大腸は精神面など色々な理由により、
かくれんぼで入ることは禁止されている。
つまり、もう逃げられない。
「あーもうちくしょう!」
クグリは捕らえられた。


「見つからないね、シュン君」
「あいつ、ずっと見なかったけどなあ」
9分経過したが、シュンだけがまだ捕まっていない。
「いつもそんなに隠れるの上手じゃないのにね」
「まあ、あいつとしてはできるだけ長くメグミちゃんの体内にいたがるのは
 当然のことだろうね。だってあいつはうわ何をするqあwせdrftgyふじこ」
何か言おうとするユウジの口を押さえるエツコ。
そして、何のことかわからず呆けるメグミ。

ふざけ合っているうちに10分経過。ピーッとアラームが鳴った。
「あらら、終わっちゃった」
逃げ切れてない奴のアラームと信号はそのまま発し続ける。
アラームは、意外に近くで聞こえた。
メグミの顔から。
「もしかして……」
「メグミちゃん、あーんしてみて」
メグミが口を目一杯に開けると、右下奥歯辺りからピーピー。
水を含ませて内視鏡を遣り、シュンを捕まえさせた。

「いやあ飲まれ損ねたあと、内視鏡が全部喉の奥へ消えていったから、
 ここが一番見つかりにくいかなと思って……」
飄々と話すシュンに対し、4人は渋い顔。
「いや、ていうか……ズルじゃん」
「えー、そんな決まりは」
確かにそういう規則はないが、内視鏡を飲んで探すという前提である以上
飲み込んだ先の範囲で隠れることが逃げる人のマナーということで
シュンは罰を被ることになった。
「ええ、そんな、いいよ別に……」
「メグミちゃんは良くてもあたしらは良くない!」
4人は一所に集まり、罰の内容を決める秘密会議を始めた。

「それじゃ罰を発表しまーすっ。シュン君はこのまま一晩、
 メグミちゃんの体の中にいてもらいまーす」
「え、えーーーーーーーーー!?」
驚いたのはシュンではなく、メグミだった。
「大丈夫だよ、明日は日曜日だし、
 これからみんなでメグミちゃん家に泊まることにすれば」
抵抗しようとするが言葉にならず腕を上げ下げするだけのメグミ。
意見が一致しないままユウジはシュンをつまみ上げて
「ほら、あーんして」
顔を最大限に赤らめたメグミは、ゆっくりと口を開けて……
ぱくっ

メグミの家に向かう途中、自分の体内にいるシュンに無線で話し掛ける。
「もう、シュン君も何か言ってよー……ずっとあたしの中にいるのも嫌でしょ?」
何故か黙ったまま答えないシュン。ニヤニヤする他の4人。
「まあ、ずっと口の中にいて他の所見られなかったもんなあ」
「たっぷり時間があるから、勢い余って行っちゃダメなとこまで行くかも」
「あ、それだったら出口が下の方に」
とんでもないことを言い出す4人。
しかし、メグミは尾籠な話題にその可能性を悟り、赤面は最高潮。
「あ、あ、あ、い、いやあああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!」

ヲハリ

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